プロジェクト3
日本一有名でありながら
店頭には並ばない極上の味「車海老」
数ある海老の中で、最上の味が車海老
「数ある海老の中で、味が最上なのは車海老」であると私は思ってる。
そう発言すると、伊勢海老は?とかボタン海老は?という意見が必ず出てくる。確かに、伊勢海老もボタン海老も旨い。特に刺身で食べるなら伊勢海老やボタン海老に軍配が上がるかもな?と思うのだが、車海老をちょうど良い加減に茹でた(蒸した)ものを食べた時には、うまいを通り越して震えるような感動すら覚える。私の食経験において、車海老はあまりのおいしさに手が止まらなくなった、唯一の海老だ。
車海老は生で食べるよりも火を通した方が旨味・甘味が増す。
鮮度の良いものを手に入れると、どうしても「生が一番」という日本人的な考えが生じるのだが、車海老は是非とも火を通して食べていただきたい。まず、これを忘れないで欲しい。
最上の調理法は「天ぷら」だという人が多い。私も自分ではそれほど天ぷらはやらないが、そう思う。天ぷら屋で車海老を注文しないのは、鮨屋で鮪を注文しない事に等しい。
天ぷらがおいしいのは程よい温度でジックリ中まで旨味を逃さず揚げられるからだ。それと同じような調理法が蒸し物。私は車海老を適当に酒を振って蒸すだけで食べるのだが、これが信じられないほど旨い。
車海老は食卓に並ばない幻の味?
家庭で料理される海老は、揚げたり茹でたりされたものの上に何らかの味の濃いソースがかけられる事が多い。これがおいしい海老を食べなくなった理由なのではないかと思っている。
例えば、「エビマヨ」という人気メニューがあるが、この料理法であれば海老の味よりもソースの味が大事で、実際に食べてみると海老の味がするようなしないような。これでは、素材に大金を使う気にはなれないのはわかる。そこで、味はそこそこで良いから、もっとリーズナブルな海老はないかという事になったのだと思う。
養殖のバナメイエビ
活きの車海老
世の中に出回っているほとんどは、輸入のバナメイエビ
今、我々が普段食べている海老は何かというと、ほとんどはバナメイエビというインドネシアなどの温かい地域で養殖されている海老だ。ややこしい事に、このバナメイエビも本家の車海老も「クルマエビ科」に属する、系統上の近縁種になる。
バナメイエビは産地で冷凍され日本に輸入されてくる。水産庁の平成27年の統計によると、その量年間15.7万トン(他の種類の海老も含む)。対して、国内で水揚げ・養殖される車海老の量は334トンと輸入海老の僅か0.21%に過ぎない。日本人1人当たりに換算する2.7gだから、5〜6人に1匹位しか食べてない計算になる。
日本人は車海老が潜在的に好きであるのだが、輸入の近縁種を食べる事によりその欲が満たされていて、結果、本家の車海老を食べる機会がなくなってしまっているのだ。
今、我々が普段食べている海老は何かというと、ほとんどはバナメイエビというインドネシアなどの温かい地域で養殖されている海老だ。ややこしい事に、このバナメイエビも本家の車海老も「クルマエビ科」に属する、系統上の近縁種になる。
バナメイエビは産地で冷凍され日本に輸入されてくる。水産庁の平成27年の統計によると、その量年間15.7万トン(他の種類の海老も含む)。
対して、国内で水揚げ・養殖される車海老の量は334トンと輸入海老の僅か0.21%に過ぎない。日本人1人当たりに換算する2.7gだから、5〜6人に1匹位しか食べてない計算になる。
日本人は車海老が潜在的に好きであるのだが、輸入の近縁種を食べる事によりその欲が満たされていて、結果、本家の車海老を食べる機会がなくなってしまっているのだ。
しかし車海老とバナメイエビは別物
車海老は茹でたてを是非
バナメイエビの名誉のために言うがこの海老は冷凍輸入でも結構おいしく、国内で養殖されている生のものはおいしい。味を悪くさせるのは海老自身のポテンシャルではなく、大量の水を使って頭をとって殻をむき、冷凍される工程の中で味が抜けてしまっているのがその理由だ。
しかし、しかしだ。それでも尚、バナメイエビは近縁種でありながら、車海老とはまったく別物と言わざるを得ない。バナメイエビを蒸していざ食べるとやや物足りなく、何かソースとか醤油とかそんなものが欲しくなる。車海老はそういうものが何もいらない。塩さえもなくて良い。
1点注意点があるとすれば、車海老も冷めるとそれほどの感動はない事で、鮨屋よりも天ぷら屋で車海老が人気なのはこういう理由だと思う。逆に言うと、「蒸し(茹で)たてを熱いうちに食べる」だけで、信じられないほどおいしいのだから、とても料理は簡単だと言える。
車海老はどこに行けば、食べる事ができるのか?
さて、我々はどこで車海老を食べる事ができるのだろうか?
まず一流の天ぷら屋で出されているのは間違いない。次いで同じクラスの鮨屋も車海老なのだが、車海老は「茹でてから時間が経つと味が落ちる」ので、そこが悩ましい。茹でたてを握る鮨屋もあるので、そういう店で食べて貰えば真価がわかると思う。
もっとリーズナブルなお店でも「車海老」と謳ってる事がある。これは2通り考えられ、1つが「アガリ(死んだもの)」の車海老を特別なルートで仕入れ使っているパターン。もう1つがクルマエビ「科」のもので、実際は違う種類の海老のパターン。「アガリ」の場合は良いが、「クルマエビ科」のものは別物だから、ちょっとそれは営業努力とは違う。
つまり、車海老は一級の料理屋以外ではその真価はわからないのが実情だ。となると、車海老はシンプルに料理してもうまいのだから、わざわざ外で食べず、家食こそが正しい食べ方だと言える。
極上の車海老を豊洲の仲卸
「亀福」の双木(なみき)社長に選んでもらう
では、その車海老の中でもどんなものがあるのか?その違いを説明するので十分に理解していただき、その上で、是非「家で車海老」を楽しんでもらいたい。その食材は、海老専門の仲卸「亀福」からお届けする。この店には星付きのシェフが通い、この間も偶然テレビでよく見かける中華のシェフが仕入れをしていた。
豊洲市場の海老専門の仲卸「亀福(かめふく)」は、最高級の車海老をはじめ、他店では出合えない様々な産地の極上海老を扱う。創業は平成7年。別の仲卸で海老を専門に43年経験を積み独立した父親の代から始まり、今は二人の息子達が看板を守る。海老の目利きは、手の感覚。選別では手で触って鮮度の良さを確かめる。
まず、天然と養殖があるが、今はほとんど養殖。天然は全体の1割程度だ。 養殖が主体であっても、毎日相手をしている鮨屋などは「できる限り天然」を持っていく。すきやばし次郎の著書などにも「やはり天然」と書かれているので、本物を求める方には天然をオススメする。天然モノは見た目が美しい。茹でた時に綺麗な紅白になるのが天然で身詰まりもよい。そのため同じ重さでも、天然と養殖では大きさが異なる。
車海老の評価を決めるのは「鮮度」
しかし、車海老の評価を決めるのは天然か養殖かではなく「鮮度」だと双木社長は言う。天然モノより評価される養殖モノもあるし、個人的な意見も含めて、天然か養殖かはさほど気にしなくて良い。
車海老の旬は本来は夏だが、この時期は鮮度が落ちやすく、当然味も落ちやすい。養殖が中心の昨今においては、冬の方が平均値は高いようだ。
次にサイズ。 一般的に、極小のものをサイマキ、小さいものをマキ、中サイズをクルマ、大きいものを大クルマと呼ぶ。どれも美味なので好みではあるが、選ぶとするとマキ〜クルマのサイズが良いとは言われているが、これも「何に使うか」によって評価が分かれる。 一口で口に入るサイズが良いとう人もいれば、クルマ以上じゃないと車海老の本当の美味しさは味わえないという人もいる。ここはお好みで問題ない。
おいしく食べるには
「火を通し過ぎない」これだけ
車海老を料理をする上で最大のポイントは「火を通し過ぎない」これだけです。 先ほども言いましたが私は酒蒸しにしてます。フライパンに水を張り沸騰させて、その上に海老が入ったお皿をのせ酒を適当にふる(塩はいれません)。
途中で1回くらい混ぜて、全体が赤くなったら完成です。鮮度の良いものが手に入ったら生で食べたってかまわないのですから、まだ中は生かもな?というところで火を通すのを止めてください。
私が市場で働いてから最も購入頻度が高くなったものが車海老です。一度この味を知ると、他には戻れないと思います。是非、ご家庭でお試しになってください。
文:井上真一