いちご戦国時代を戦う
15,000株の中から選び抜いた佐賀県オリジナル品種
「いちごさん」
2018年秋にデビューした「いちごさん」はJAグループと生産者が一丸となって15,000株の中から選び抜かれた佐賀県オリジナルのいちごの品種です。通常、品種改良には10年以上かかるのですが、なんとか美味しいいちごを生み出したいという関係者の思いが集結し比較的早い7年間の品種改良で登場しました。これは、さがほのか以来20年ぶりの佐賀県オリジナル品種ということで、熱い注目を浴びています。
「さがほのか」の血筋が強い「佐賀14号」に、群馬県が開発した「やよいひめ」を交配して色ツヤはもちろん、形も良く甘さも申し分なし。全国各地で次から次へと新品種が生まれるいちご戦国時代において、品種としてとても優秀なので、佐賀県で栽培されるいちごの90%以上が「いちごさん」へと切り替わっています。
一度聴いたら忘れられない
ブランド名
「いちごさん」
全国各地で次から次へと新品種が生まれるいちごの世界。理想のいちごを目指した「いちごさん」は、日本中の人に、長く愛されるいちごとなることを願い、呼びやすくて覚えやすく、そしてインパクトを合わせ持つ名前を目指して命名しました。「いちごさん」はブランド名で、正式な品種名は「佐賀i9号」です。
キャッチコピーは「眺めてうっとり、かじって甘い。」赤く、大玉で、形が良く、ジューシーで華やかな甘さが魅力の「いちごさん」を表しています。
おいしくて、収穫量が多く
生産者にとってうれしい品種
どんなこだわりを持って栽培しているのか、2023年11月にJAからつ管内の生産者を取材しました。
「味はいいんだけど、病気に弱くて栽培しづらい」
と生産者はおっしゃいます。
「だけど、味が良くて1株からの収穫量も多いから農家にとってはうれしい品種だね」とも。
いちごさんが誕生する前に佐賀県で栽培されていたさがほのかは1株8〜10粒ほど、それに比べいちごさんは1株に15〜20粒ほど果実を付けます。
収穫期間は11月末から6月中旬ごろ。ハウス内は冬場でも25〜26℃を保つように暖房で温めます。
生産者の高度な技術が
創り出す
極上のいちごさん
美しく、大きく育て、美味しく仕上げるために栽培技術の探求は終わりません。
栽培するハウス内には長年の経験よるノウハウが詰まっていました。
ハウスには等間隔でライトが並んで設置されていました。
日照時間を長くさせて成長を促進させます。
ハウス内を温める暖房の役目に加え、二酸化炭素を排出しています。
これにより光合成が促進されます。
ハウス内は受粉を目的として多くのミツバチが飛び交っています。
いちごを栽培しているハウスではミツバチだけでなく、マルハナバチ(丸花蜂)もいました。
それぞれのハチの特性から、受粉漏れがないよう工夫しています。
豊洲市場ドットコムで扱う「いちごさん」は
佐賀県産の中でも
JAからつ限定です
佐賀県、玄界灘を望むエリアに位置するJAからつはハウスみかんの生産量が多く、いちごのハウス栽培も盛んな地です。管内のいちご生産者は235名(令和5年)で、4,864aの栽培面積を有し、2,538tもの収穫量を見込んでいます。(※)
JAからつにはパッケージセンターという生産者から収穫したてのいちごさんを持ち込む施設があります。パッケージセンターでは生産者から受け取ったいちごさんをすぐに冷蔵室へ運び入れます。半日から1日ほど予冷することで、果肉がぎゅっと締まります。その後、光センサーを通し形状やサイズ、糖度を確認してランク分けされます。
以前は予冷から選果まで生産者が行っていたのですが、収穫直後にパッケージセンターへ持ち込むことで品質が保たれ、より美味しいいちごが届けられるようになったのです。
※JAからつ令和5年いちご販売計画資料より
“理想のいちご”を
とことん追求した
いちごさん
まず、箱を開けると苺で赤くて綺麗な艶でとても美しいです。そして、香りが広がります。かぶりつくと果汁がたっぷり。酸味が控えめで華やかな甘さが楽しめます。 いちごは摘み取ったあとは着色はしますが、甘みが増すことはないのでなるべく鮮度がいいうちに食べることをおすすめします。
文:大村 花恵(食文化)