山内かぶら

山内かぶらは福井県若狭町山内地区にのみ残る在来種で、少なくとも100年以上前、明治年代より栽培されていたとされている。
通常のかぶよりも細根が多く土の中の養分を吸い上げる。緻密でしっかりとした肉質が特徴で、根（厳密にいうと半分は茎）の中心部は大変甘く、皮の近くはほろ苦さがあり、そのバランスが良い。

葉もシャクシャクと力強い味がする。
菊乃井の三代目主人・村田吉弘氏もこのかぶを好み、壺漬けにして店のメニューの1つとして出されていたそうだ。

お寺の報恩講料理に
欠かせないものだった

福井県では昔から仏教の信仰に熱心で、地域の檀家が集まり説法を聞く「報恩講（ほんこさんなどと呼ばれる）」がさまざまな場所で行われていた。その時に振る舞われる料理にこの山内かぶらが使われていた。

報恩講料理では主に汁物の具として使われていた。普通のかぶではトロトロに煮崩れしてしまうところが、山内かぶらは煮崩れすることが無かったため、朝から晩まで長時間たくさんの人が集まる報恩講の食材として重宝されていた。

山内かぶらは地域外に出る事がほとんどなかったのもあり、住民にとって身近で愛着あるものだった。

山内かぶらは若狭町山内地域に古くから親しまれてきたこの地域の在来品種です。
地域の歴史が書かれた1916年（大正5年）の「鳥羽村誌」によると、「良質の蔬菜（葉もの野菜）を産し、とくに山内蕪菁（かぶら）の名は古くから広く世間に伝わっている」とある。
少なくとも100年以上前（明治時代）にはあったようだ。ところが、1950年代末には数人の生産者が細々と栽培されている程度になり、1987年には高齢化等のため一旦途絶えてしまう。

それから約10年後の1996年になりこの山内かぶらの伝統野菜として高い価値を若狭町と共に再確認をするきっかけがあり、福井県農業試験場に保管されていた種を用い飛永悦子さんが栽培を再開した。

少しづつ賛同メンバーも増え、2007年に全国でも極めて稀な、高齢の女性だけの生産団体「山内かぶらちゃんの会」がスタート。高齢でも女性らしさをだそうと、山内かぶらに可愛いらしく「ちゃん」をつけた！

栽培から漬け込みまで
すべて手作業です

山内かぶらは細根がたくさんついている。この細根が土の養分をたっぷり吸い上げ、うまみが濃く緻密な肉質なかぶになる。