近畿大学農学部農業生産科学科の
学生たちが作った、
なら近大農法(ICT農法)の
イチゴとメロン
- 多くの方が農業に参入できる
楽しい未来がすぐそこに!
15学部49学科を擁する近畿大学は、養殖漁業、バイオコークス、環境・まちづくり、クリーンエネルギー、次世代農業など、持続可能な世界の実現に向けて数多くの研究や社会貢献活動を積極的に行う総合大学です。
農学部・農業生産科学科・植物感染制御工学研究室の野々村照雄教授は、少子高齢化に伴なう農業生産者の減少や、休耕地・耕作放棄地の増加などの社会問題を解決するために、なら近大農法(ICT農法)を利用した栽培管理方法の確立に着手しています。
農法をマニュアル化することで、安定した品質・特性をもつ農作物を生産することができます。また、ICT(情報通信技術)を導入することで、農業初心者、女性、障がい者の皆さんにも容易に農作業ができるようになり、農作業の負担軽減、雇用確保にもつながると考えています。
ICT農法により、農業は身近で
気軽にできるものになってきた
ここで、なら近大農法の研究がされている
農業は個人の経験や勘に頼ることが多く、その追及が魅力でもありますが、新規就農者にとっては高いハードルでもあります。なら近大農法では、農作物の栽培に必要な温度調整など管理機能にICT(情報通信技術)を導入することによって、農作業の勘と経験に頼っていた部分を自動化し、農業初心者でも容易に栽培管理が可能になります。
実際に農作業を行う、近畿大学農学部農業生産科学科の学生たちのほとんどは農業経験がゼロです。
農学部農業生産科学科では2017年(平成29年)から、ICT農法を用いた栽培を開始しました。学生たちは毎年変わるので、当然経験も勘が働くこともなく、マニュアルだけが毎年更新され受け継がれていきます。2017年に収穫されたメロンは400玉(1株に1玉)。農業未経験者でも栽培することができました。この時に収穫したメロンは、スーパーや百貨店で販売しました。
マニュアル化しにくい
農作業をマニュアル化して、
ブレのない品質の果実を
作り上げる
なら近大農法では、農作業の負担軽減のために、肥培・日照・温度の管理が最も重要と考えます。
土壌センサーと日照センサーを連動させた装置によって、作物(イチゴやメロン)に水分と液肥が自動的に供給され、これらの情報は蓄積され、スマートフォンなどで遠隔地でもデータを確認することができます。また、ハウス側窓の自動巻上げ機が温度センサーと連動しており、ハウス内の温度をほぼ一定に保つために自動的に開閉が行われます。
例えば、イチゴのマニュアルは、いちごの縁F代表の藤原大輔さんの指導と、研究施設などのイチゴ栽培ノウハウを合わせた形でデータ化したものに、いつ・どのような作業を行ったのかを、リアルタイムで細かく記録・保存し、次年度以降の栽培を同条件で行うために用いられます。新規就農者は、この栽培記録に基づいて栽培すれば、安定した収量で良質な果実を再現できます。
効果的に水や液肥を与え、
コスト削減効果も期待できます。
このような完全自動化肥培管理システムの導入は、農作業の時間を大幅に削減できます。栽培面積にもよりますが、専業農家であれば1人で行うことが可能だという事です。さらに、効果的に水や液肥を与えることで生産性も上がり、収穫量と品質の安定化へとつながることが期待されます。
果物の持つ個性を引き出す
イチゴの持つ魅力には、甘味と酸味のバランスなどの味の面だけでなく、輸送などで傷みにくい・日持ちがするといった流通面があります。現在、国内では300種以上のイチゴ品種があると言われています。イチゴ品種の中には、甘味と酸味のバランス、果実の硬さ、形や大きさは異なりますので、それぞれの品種のもつ特性や特徴に適した栽培を行うことが、なら近大農法の目指す姿です。型にはめるのではなく個性を生かした栽培方法です。
なら近大農法が
目指す未来
ICT(情報通信技術)を活用してできたメロンやイチゴは、さまざまな加工品(六次産業化)にも用いることができます。生鮮品だけでなく加工品を販売することにより、幅広い消費者の皆さんに喜んで頂きたいと、野々村教授は考えています。
さらに、「なら近大農法」では、「農の入口」から「農の出口」までの一連の過程にICTやIoT(モノのインターネット)を導入することで、安全かつ安心な農作物を、持続的に提供することを目指しています。
この「安全」かつ「安心」な農作物の提供は、農業を行う者に課せられた使命であり、その結果として皆さんを「笑顔」にできることがこのICT農法の一番の魅力だと、野々村教授は嬉しそうに語ってくれました。
■動画コンテンツ
「奈良から世界へ!
ICT農法がもたらす農業革命」
文:井上真一