埼玉県のいちご
「あまりん」「かおりん」
「べにたま」
概要
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いちごのブランド産地と言えば、東の栃木県、西の福岡県…
お世辞にもいちご産地の印象があるとは言えない、埼玉県が
2023年3月9日に「プレミアムいちご県」に認定されました。
(認定元:日本野菜ソムリエ協会) - 実は今、埼玉県のいちごがアツいのです。
- 県のオリジナル新品種「あまりん」「かおりん」、そして「べにたま」 なかでも、「あまりん」は練乳いらず糖度20度超えの甘さ!と フルーツマニアやメディアを中心に話題沸騰中です。
- 今回は育種を担当された、埼玉県農業技術研究センター 野菜育種担当 尾田 秀樹さんにお話を伺いました。

実は埼玉県は1970年代には作付け全国一位だった歴史もあるんですよ。
関東ではダナーとかそういった品種が作られていた時代です。
ですが、露地栽培が浸透していたがゆえに、ビニールハウスの導入が遅れて
あっという間に栃木県などに生産量が抜かれてしまったんです。
そんな過去は、ほとんどの人が知らないと思いますけどね。

では、もともと埼玉県の独自品種もあったのでしょうか。

はい、ありました。ただ、育種の歴史は他県に比べて非常に短いです。今まで2品種、県の独自品種がありました。 一つ目は「ベリースター」耐病性はあったものの斑果が多く発生してしまい、広まりませんでした。
二つ目は「彩の香」実はこれは食味もよく、大粒でこの品種はいけるぞ!というムードでした。しかし、大変間の悪いことに「彩の香」が発表された平成8年は、あの「とちおとめ」発表された年。完全に同時期にかぶってしまったんです。
とちおとめは強敵でした…
農家さんに「さあ、どっちを選ぶ、作る?」となったときに輸送性(当時にしては硬かった)、収量性、色つやも美しいとちおとめに完敗したんです。
そこであっさり、埼玉県は諦めます。
もういっか。育種しなくて、と。

なんと間が悪い。心が折れるのも頷けます。

しかし、平成19年に転機が訪れました。
当時、埼玉県では観光農園(摘み取り園)が急増していました。せっかく埼玉県にいちご狩をしに来てもらうなら、県の独自品種が欲しい。そういった声が観光農園の農家さんから多く上がりました。
そこで育種が再開されたのです。
関係者のなかでは、埼玉県の育種は他県に比べて、後発も後発だから一芸に秀でていないと、目立たないでしょ…という共通認識がありました。
今更、埼玉がただ単純に収量性のある品種したところで埋もれてしまうから、
なにかに特化した品種を作ろう、と。
それが食味だったのです。
市場流通が前提ではないので、収量性や流通性よりも、とにかく食味を追求したことで、 濃く甘い、味わいのいちご「あまりん」「かおりん」が生まれました。

なるほど!摘み取り園やその軒先での販売が中心だからこそ
「店頭にはおかれていない、埼玉の凄く甘い品種があるらしい」と
フルーツマニアの間で口コミが広がり、より、注目されるようになったのですね。


PRに力やお金がかかっている新品種はたくさんありますが、
埼玉県の「あまりん」「かおりん」は食味が美味しいという評判が先行して市場や小売、
そのバイヤーが欲しがっている状態になっているから凄いですよね。

こんなことを言っていいのか、宣伝については他県ほど、頑張ってはいないのですが、 農家さんが現場で広げてくれた、大変ありがたい。というような感じです。

あんなに凄い品種をつくったのにアピールは!?と思っていました。

はい、実際、上司や県もあっさりしていました。お疲れ様!みたいな(笑) ですが、推しすぎなかったところ、 また、いい意味で期待されすぎていなかったことで 私自身、わがままに育種できたことが、ひとつ良かったと思います。
形、色、収量、味、耐病性など、「すべて良し」でなんとかしなければならない、 となると育種は難しいんだと思います。 とくに有名産地は築いてきたブランドや農家さん達のこれからの生活もかかっていますから、育種担当者のプレッシャーも相当なものだと思います。
うち(埼玉県)には名前も知られていない品種が2つあっただけですから。 正直、ノープレッシャーというか。 そして農家さんが試験栽培など、協力的で非常にありがたかったです。


あと、仮に昔、この品種を出していても、ここまで支持されず、作る人も少なかったと思います。評価される時代になったと思います。

と、いいますと?

今、いちごの単価は年々上がっています。食味が最重視される志向になって、量より質、少なくても美味しいいちごを目指して単価を取るという方針の農家さんが増えてきました。

そうですね。もちろん尾田さんの努力と、タイミングと条件、すべてがハマった!という感じですね。
いちご好きとして、今、「あまりん」「かおりん」に出会えて良かった…と思います。
それでもやっぱり市場流通は少ないですよね。
埼玉県に行かなくても、もっと気軽に食べることができたらいいな…と思います。


「あまりん」「かおりん」の次の新品種の「べにたま」は市場流通向けの品種なので、これから出会う機会が増えると思います。これは大粒で甘い、評価をいただいています。

実は先行販売している店頭で購入したことがあります。
形が特徴的で、大粒で、とても甘く非常に美味しかったです。
私たちとしてもこの美味しい品種をもっと広げられるようにします!ありがとうございます。
昨今いちご界では各県の品種が続々と開発され、ブランド競争が激化していますよね。
そうだとしても、埼玉県にはいちご産地としての印象がほとんどありませんでした。
正直、ダークホース感があります。