プロジェクト4
知る人ぞ知る、夏が旬のマグロ
インドマグロの旨さにせまる
なんと、かつての鮨屋では鮪と言えばインドマグロだった
豊洲のセリ人の話によると、30年位前、鮨屋では鮪と言えば冷凍のインドマグロだったようで、当時は今の4倍近い価格だったとの事です。
その座を本鮪に奪われた理由は2つあります。1つは、大間の鮪を代表する近海本鮪をメディアがこぞって報道した事。
もう1つが畜養(生け簀に小さなマグロを放流し大きく育てた養殖マグロ)本鮪の価格がググっと下がった事です。
お客が本鮪を欲しがりその価格が安くなる事で、日本中に本鮪ブームが起きます。豊洲市場の年始の初セリで叩き出した3億を超えた本鮪、寿司にすると1貫2万円もの原価もなります。一方でインドマグロは部位にもよりますが50円程度でも手に入ります。 400倍の味の差は、もちろんありません。
甘くて濃厚なトロがインドマグロの持ち味
「インドマグロは本鮪にある血の香りがしない」鮨屋の親父はそんな事を言うようです。特有のプンと鼻に抜ける血の香りこそが鮪の持ち味とされ、確かに本鮪に比べるとその香りは薄いです。
魚に限らず、食材には「持ち味」というのがあります。ふきのとうは苦さが、レモンは酸味が持ち味です。レモンとみかんを比べて、みかんの方が甘いから格上という事ではないという事です。 では、インドマグロの持ち味は何かというと、「酸味(血の鉄分の味)のない赤身と甘くて濃厚なトロ」です。この味、鰹ともシンコとも違う、江戸前鮨の花となるネタとは違い、繊細さを欠くものかもしれませんが現代人の舌には合っています。
冷凍すると味が濃くなるインドマグロ赤身を最上とする
インドマグロの最大の魅力は「脂の甘さ」です。老舗の鮨屋はやはり本鮪を使いますが、それでもインドマグロのトロはうまいと言い切ります。
面白い事に、赤身の評価は、豊洲のセリ人・仲卸で意見が分かれます。「インドマグロの赤身は本鮪に比べて薄い」という意見があるのですが、それが何故か冷凍するとその味が濃くなるようです。これが意見が分かれる理由です。
生の鮪を扱う市場人は「赤身は本鮪が最上」と言い、冷凍の鮪を扱う市場人は「この味の濃くなった赤身が最高」だと言います。
鮨屋でも老舗は何が何でも本鮪ですし、比較的新しい鮨屋はインドマグロを使ったりもします。うーん、難しい。豊洲市場でも意見が分かれるインドマグロの価値。言い換えれば、「本鮪が絶対」では無いというのは確かです。
おいしくても鮨屋では使いにくい事情がある
もう1点、インドマグロをオススメする理由があります。
寒い時期に脂を蓄え味がのる本鮪とは逆に、インドマグロは夏が旬になります。これは理由が単純で南半球の鮪だから季節が逆なのです。南半球のケープタウンやニュージーランドやオーストラリア沖で獲れますが、これが鮨屋によっては敬遠される理由です。
「今日の鮪はどこの?」と聞かれて外国の名前を言うと、なんとなく常連さんをがっかりさせるんじゃないか、そんな心理があるようです。また、同じように冷凍の鮪を使っているとなんとなく残念な気持ちになってしまうが人と言うものです。
そういう訳で、本鮪ほど高値がつかない。これが市場の面白いところです。
こうして、インドマグロはそのおいしさに比例せず、安く仕入れる事ができるのです。
つまり、インドマグロ(ミナミマグロ)は 安くて旨い
ポイントを整理します。
①生のインドマグロは甘くて濃いトロがうまい
②赤身は生だと少し味が薄いが、冷凍すると本鮪に勝るとも劣らない旨さになる。(個人的には生のインドの赤身も十分うまいと思ってる)
③どちらにしても、この価格でこの味はありえない
そして、インドマグロの最高峰は「冷凍のケープタウン(南アフリカ)産」です。入荷したらぜひ一度お試しください。生の大間の本鮪と、冷凍のケープタウンのインドマグロはどちらが旨いか?是非、ご自身の舌でお確かめください!