甘いだけだと物足りない…
苦くて酸っぱい味がいい。
熊本県水俣市産 甘夏

色々な楽しみ方がある“甘夏”

甘夏、という言葉の響きからは甘いイメージがあるのではないでしょうか。
実際には甘さが主張するような果実ではなく、皮は厚めでさっぱりとした爽快な酸味、心地よい果肉の食感にほのかな苦味がクセになります。
甘夏はそのまま召し上がれるだけではなく、各種料理や製菓材料にも幅広く使えます。果皮はマーマレードやピールへの手作業に適していて、また果皮に含まれる油分は香りがよいので入浴剤としても楽しめます。
種や内袋(じょうのう)に多く含まれるペクチンはマーマレードを作る際に活躍します。
まさに捨てるところがないのが甘夏なのです。
甘さだけではない、酸味と苦味がほどよく絶妙なバランスだからこそ、食べてよし・加工しても楽しめる果実なのです。
歴史ある柑橘

甘夏の元となる「夏みかん(夏橙)」は文旦の血を引く柑橘で,1,700年頃に日本で発生した歴史の古い柑橘です。
昭和10年頃大分県の川野氏の園で、カラタチ台の普通夏橙として植栽された中から、減酸の早い品種として発見されたことから川野夏橙といわれていました。

その後、昭和25年に品種登録、昭和30年頃から愛媛県などで集団栽培が開始され、温州みかんに次ぐ柑橘でした。
昭和40年のグレープフルーツの輸入自由化によって大きな打撃を受け、生産・消費ともに減少の傾向にあります。

甘夏の大産地熊本では、昭和後半の最盛期には年間約9万トンが生産されていて熊本の産業としても消費者の人気の上でも圧倒的でした。
果実の品種改良が進み“種無しで皮ごと食べれる”柑橘に人気が移っていきます。柑橘の代名詞はデコポンへと変わり、10万トン近かった甘夏の生産量は約7,000トンまで減っていきました。

確かにデコポンは美味しい。
しかし、だからといって甘夏の魅力が落ちたわけではなく“ぷりぷり”とした食感の果肉、爽やかな甘さが魅力的。
改めて食べると流行の柑橘にはない味で、その魅力を知っていただきたい柑橘のひとつです。
自然の力を借りる栽培

一度は就職で水俣を離れ、帰ってきて農業を始めた杉本秀夫さん。
石拾いから始め甘夏の苗の植え付け行い、その頃から約50年経ちました。
水俣の過去から学び自然の力を借りて栽培を続けています。
農薬に頼らないで栽培する甘夏を食べてもらいたい。
そう想い続けて農業に取り組んでいます。
家族で楽しむ“甘夏”

甘夏の皮は硬くて子供では剥けません。大人でも一苦労です。ぜひ、ご自身で剥いてあげたものをお子さん(お孫さん)に手渡しして食べさせてあげてください。なんてことない行為なのですが、その一時がとても幸せな気分になります。手間がかかる果実もたまには良いものです!少し贅沢な時間をお過ごしください。