蟠桃（ばんとう）

蟠桃は、私たちの桃のイメージとはかけ離れた平たい形が魅惑的です。味はジューシーな桃と比べると水分は少ないですが、ちょうど良い食感で甘味酸味のバランスが良い桃です。「ライチやマンゴスチンに似た深みのあるエキゾチックな味わいを感じる」という人もいれば、「糖度が高くて甘い、味が濃いというわけではないが品がいい味わい」と表現する人もいます。

形は歪ですが、薄い皮は手で簡単に剥け、種離れもよく綺麗に食べる事が出来ます。果肉は柔らかですが、それほど水っぽくはなく歯ごたえもあり楽しめます。

果実が扁平形なので平桃（ぴんたお）や座禅桃と呼ばれる、 中国の揚子江地域が原産の原種に近い桃です。 『西遊記』に登場する孫悟空は、 蟠桃園の中でも９千年に1度実る桃を食べて、 不老長寿になったといわれています。

西遊記伝説で、孫悟空が天竺を目指す旅に出るきっかけとなったのも蟠桃。
西王母という女神の誕生を祝う会で蟠桃会（ばんとうえ）に孫悟空だけ呼ばれませんでした。
それに腹を立てた孫悟空は、西王母の所有する桃園から桃を盗み食いしてしまいます。 西遊記は、この桃を食べて不老長寿になる話です。
昔から、桃を食すと長生きすると伝えられていますが、蟠桃こそ百薬の長では？ と思わせる不思議な形と味です。

蟠桃は海外、特にヨーロッパでは比較的たくさん出回っているそうですが、日本ではとても希少です。栽培しているのは全国でも福島・山梨・山形・長野の限られた地域だけでどの産地も収穫量は増えていません。そのため、市場でもなかなか見ることがありません。

私たちが取り扱っているＪＡふくしま未来の蟠桃は例年1,000箱〜1,500箱だけの出荷量になります。

蟠桃は総称であり、いくつか品種があります。

▼当店で扱っている品種
大紅（だいこう）蟠桃：
千年（せんねん）蟠桃：大紅蟠桃を選抜育成した晩生の品種
七夕（たなばた）蟠桃：大紅蟠桃を選抜育成した早生の品種
▼その他の種類もあります
黄金（おうごん）蟠桃：大紅蟠桃を選抜育成した黄色の果肉が特長の品種
舞姫：ピンク色の蟠桃　※長野の生産者が品種改良をしたオリジナルの品種
楊貴妃：黄色の蟠桃　※長野の生産者が品種改良をしたオリジナルの品種
蘭華：ピンク色の蟠桃　※長野の生産者が品種改良をしたオリジナルの品種

蟠桃は桃の一大産地福島県でもJAふくしま未来の地区で4〜5名しか生産していません。
その一番の理由は栽培が難しいから。
硬核期（こうかくき）と呼ばれる果実の肥大が鈍化し、核（種）が硬化する時期に核が割れやすい品種で、ドーナツのような桃になってしまいます。見た目だけなら問題ないのですが、割れたところから傷んだり、病気にかかりやすいためロス率が通常の桃の約3倍にもなってしまうそうです。そのため、敬遠されている品種で生産量が増えない貴重な桃です。

福島県伊達地区で蟠桃を栽培している齋藤栄慶さんの圃場にお伺いしました。

齋藤さんは蟠桃を栽培して約20年。長年の経験から品質のよい桃に仕上げます。
「蟠桃は栽培しづらいと言われているが、通常の白桃などより樹は育てやすい。枝の成長がいいので、思い通りの枝作りができる」とおっしゃいます。

ロス率が高く、核割れの状況しだいて安定した収穫量にならないにも関わらず、栽培を続けているのは、やはり蟠桃の味に魅力を感じているから。
「白桃や黄桃と違って、もの凄く甘いということはないんだけど、上品な味が好きなんだよね」とその魅力を語ってくださいました。

伺ったのは収穫がピークを迎える約3日前。樹になっている蟠桃の中から齋藤さんが「これぞ」と思う1番の出来のものを選んでもらったのが上記写真の1玉です。女性の掌くらいのサイズで、いびつな形。中心が凹んで隆起がくっきりと出ていました。繊維の詰まった固めの食感が期待できます。