青森県八戸市 宝成食品株式会社
トッピングにも“殻”にもホタテ
器ごと食べる
ほたてグラタン

カニ甲羅の形をした最中の皮を作り、中にグラタンを詰めたアイデア商品「器ごと食べる蟹グラタン」を2024年秋に発売した宝成食品株式会社(青森県八戸市)。甲羅ごとカニを食べるの?
という目新しさや、食後にカニ甲羅がゴミとして出ないというメリット、そして手ごろな価格と誰もが好きな味で、予想を大きく上回る売れ行きになりました。
そんな宝成食品の代表取締役 河村隆衛さんが新たに開発したのが「器ごと食べるほたてグラタン」。器にしている”殻”ごと食べられるというコンセプトの第2弾商品は、素材選びのこだわりが深化しています。


宝成食品は2009年に河村さんが創業。社屋は日本最大級の「館鼻岸壁朝市」が毎週日曜に開催される館鼻岸壁の近くにある。ズワイガニやエビや県内で獲れる水産品を使った自社商品を製造加工し、量販店などへ卸売販売している
金型から特注して作る
“食べられる器”
ホワイトソースたっぷりのマカロニグラタンのトッピングは、地元・青森県陸奥湾産のベビーボイルホタテです。全国でもトップクラスの生産量を誇るホタテが、小粒ながら丸ごと2つ載っているので、見た目にインパクトがあるうえに、噛むことでしっかりとした食べ応えも得られます。
一番の特徴である「食べられる器」は、同社がデザインして大阪の製造機械メーカーに金型から作ってもらうところから開発しています。独自配合の生地を自社で型に流し込み焼き上げるという、完全にオリジナルの“器”なのです。


ホタテの貝殻をデザインした皮を器にした「器ごと食べるほたてグラタン」は、
製造装置を一から開発した独自性の高い商品
きっかけは カニ甲羅の欠品
食べられる器を河村さんが着想したのは、器として使っていた本物のカニ甲羅が欠品してしまい、グラタンを製造できなくなるという経験からでした。お客に安定してグラタンを提供するためには、アイスクリームのコーンのような食べられる器を開発すればいい。そう考えた河村さんは、唯一無二の「器ごと食べるグラタン」の開発に取りかかります。
アイスクリームのコーンや最中の皮を思い浮かべながら、作ってくれそうなメーカーに話をもちかけますが数量で折り合いがつかずに断念。ならば自社開発しようと計画を変更したところ、装置は特注できたものの器にする生地の開発にはとても苦労しました。
中に入れるグラタンの水分で崩れてしまうことのない皮はどうやったら作れるのか。材料の配合や生地の厚みなどについて、試行錯誤が続きました。


食べられる器の開発を振り返る河村さん。一番難しかったのは、
グラタンの水分に負けない器を作る方法だった
「(初めて開発した)カニ甲羅型を作るときにたくさん失敗したので、ホタテ型は見当をつけて進めることができました」(河村さん)。小麦粉やコーンスターチや魚のすり身をベースにした生地には、ホタテパウダーやホタテエキス(ホタテの煮汁)を加えており、噛むとホタテの香ばしさが生地からも感じられます。さらに、器のパリパリとした食感を強くするために、小麦粉だけでなく青森県産の米粉も配合しました。
輸入に頼らない
「持続可能な製品」を武器に
カニのグラタンの次は、ホタテのグラタンを作る。河村さんの選択の背景には、「持続可能な製品を自分たちの武器にしたい」という思いがあります。「円安傾向や資源の枯渇などから、カニなど海外産の原料はすべて価格が上がっています。ホタテなら青森県産で養殖が安定しているし、青森県産品として私たちが作る意味もあります。お土産品としての需要を生み出していきたいですね」

年代を問わずに好まれる味。
食事に、スナックに
商品は1箱4個入りです。一つずつ個包装したものを冷凍でお届けするので、食べる分だけ冷蔵庫内もしくは電子レンジで解凍した後に、オーブントースターで約14分間(1100Wの場合)加熱します。

解凍時には水分を吸ってしっとりしていた皮も、焼いている間にパリパリになり、おいしそうな焼き目がついたら出来上がりです。ホタテの風味がするパリっとした皮の中には、クリーミーで熱々のマカロニグラタン。上にはゴロっとしたホタテが載っており、口の中でそれぞれの食感の違いが楽しめます。ホタテが丸ごと使われてることもあり、見た目以上に食べ応えがあります。
お子様から大人まで、年代を問わずに好まれる味に仕上げているので、食事でいただく一皿としても、小腹がすいたときのスナックにも、冷凍庫にあるとすぐ出せて重宝しそうです。
文/大屋奈緒子 写真/八木澤芳彦(商品)、
世永智希(取材)