持続可能な漁業をめざす
伊吹島プロジェクト
出汁でよし、食べてよし
「伊吹いりこ」
出汁の材料「伊吹いりこ」になれなかった「脂いりこ」に新たな価値が生まれました。
香川県伊吹島特産の「伊吹いりこ」
原料となるカタクチイワシの中には、「伊吹いりこ」には向かず、加工されないイワシもあります。脂乗りのよい太ったイワシは乾燥の段階で酸化が進み、出汁をとると脂焼けで雑味や魚の臭みが強く出てしまうのです。
しかしながら、一般的に食用には脂の乗った魚の方が好まれます。
そこで、2020年に伊吹島の15の網元が中心となり「脂イワシ」を使って開発されたユニークな製品が、「サーディンプレート」と「釜揚げいりこフライ」です。
うどん県香川の出汁文化を
支える「伊吹いりこ」
伊吹島で水揚げされるカタクチイワシを加工した「伊吹いりこ」は、巨大なしらすとも言うべき濃厚な旨みと雑味のない味わいが特徴です。郷土料理の「いりこ飯」「まんばのけんちゃん」また、「唐揚げ」「南蛮漬け」「味噌汁」の具材として昔から漁師、島民の間で食べられてきました。
出汁には適さない脂いりこは地元で愛されてきた
漁師食材です
魚体サイズ6〜8cmの中羽と8cm以上の大羽のカタクチイワシのうち、鮮魚の段階で脂肪含有量が2%を越え、漁師の間では「脂イワシ」と呼びます。乾燥させ、いりこに加工した「脂いりこ」は脂が酸化し黄色く変色してしまいます。出汁をとっても雑味や魚の臭みが出ることから、これまでは酸化する前に島民や漁師のみで食べるか、畑の肥やしにしていました。
しかし、近年は海の栄養が豊富になるなどの変化から、太ったイワシが目立つようになったと言います。
敬遠されてきた「脂イワシ」ですが、乾燥させることを考えなければ脂がのったおいしい魚。地元で愛されてきた漁師食材です。どうにか有効活用することはできないか。試行錯誤を重ね、新しいアイディアを出してきました。
「脂が乗っていることを
活かす」という逆転の発想
「脂イワシ」の脂のおいしさを存分に味わうという、まさに逆転の発想で誕生したのが「釜揚げいりこフライ」と「サーディンプレート」。どちらも冷凍商品で汎用性があり、手軽に日常の食卓を彩る一品に早変わりします。
伊吹島では漁場と加工場の近さが特徴。水揚げから30分以内の抜群な鮮度状態で一度釜揚げにします。出汁用の「伊吹いりこ」の場合は乾燥させますが、「脂いりこ」は脂の劣化を防ぐために、茹でてすぐに-30度で急速冷凍。それを原料として、汎用性があり手軽に日常の食卓を彩る冷凍商品を作りました。
どちらもいりこを皮や内臓、骨まで丸ごと使用しています。
旨みだけでなく、カルシウムを筆頭に注目のEPA・DHA、必須ミネラル類やビタミン類を余すことなく摂取できる素晴らしいホールフードであると言えます。
カルシウムの一般食品からの1日のカルシウムの平均摂取量は、男性は700mg〜800mg、女性は600mg〜650mg。(※1)
それに対して、一般食品からの1日の摂取量は504.9mg。(※2)差分は最大で約300mgです。
大羽いりこのカルシウム含有量は可食部100gあたりで2,200mg。1尾を1.6gとして計算すると、8尾を食べると男女ともカルシウム不足を補えます。(「サーディンプレート」は1プレートあたり15尾分の大羽いりこを使用しています。)
手軽においしく、豊富な栄養も余すことなくいただける、まさにエシカルな商品です。
※1 日本人の食事摂取基準(2020年版)における数値
※2 令和元年国民健康・栄養調査における数値
漁師たちの
エシカル発想を広げたい!
伊吹島のいりこ魅力を再発見
“伊吹島「釜揚げいりこ」を全国に広め、漁師と人々を繋げたい”という想いから「伊吹島プロジェクト」は発足しました。
出汁には適さない脂の乗ったカタクチイワシ「脂イワシ」は元々、島民、漁師のみが食べてきた漁師食材です。釜揚げした「脂いりこ」を活用し魅力を伝えることは、漁師の後継者不足や海の変化による「脂イワシ」の増加といった課題の解決にも繋がります。
食文化 田賀