岩手と秋田の「クッキングアップルの魅力をご紹介します!
豊洲パーラー
3種のアップルパイ
〜 紅玉・ブラムリー・
コックスオレンジピピン〜
画像は紅玉のアップルパイです。サクッとしたバターの香るパイ生地の中に、ゴロっと大き目にカットした紅玉がたっぷりと入っています。紅玉は酸味と甘みのバランスが秀逸なりんごです。このほか、果肉のシャキシャキ感が楽しめる、酸味の強いブラムリーのアップルパイ、甘酸っぱくこっくりとした味わいの希少品種であるコックスオレンジピピンのアップルパイの3種をセットにしてお届けします。
たっぷりの果汁を感じるジューシーさも紅玉の魅力の一つです。りんごそのものの美味しさを楽しんでいただきたいので、パイの中のフィリングの材料はりんごと砂糖、ほんの少しのレモン汁のみです。
3種のクッキングアップルを使用します。
クッキングアップルはその名の通り、調理用のりんごのことを呼びます。クッキングアップルの特徴は酸味にあります。この酸味は加熱することでコク、香り、甘さに変わります。クッキングアップルの中で最も有名なのが、紅玉です。青りんごのグラニースミスも人気です。近年国内では希少だった、クッキングアップルの生産が盛んになってきました。食べ比べてみるとそれぞれに特徴があり、大変面白いです。今回アップルパイに使うのは画像奥から岩手盛岡のサンファームの紅玉と青りんごのブラムリー、手前の小ぶりな秋田横手のクッキングアップルの郷のコックスオレンジピピンです。それぞれのりんごの特徴につきましては後ほど、アップルパイと共にご説明します。
岩手盛岡のサンファームです。
サンファームの吉田聡さんは、「土作りから丸ごと岩手」をコンセプトに三陸の牡蠣殻、アイコープ豚の堆肥、鶏糞を使い岩手の循環型農業を実践しています。りんごだけではなく、スイートネクタリン、さくらんぼ、ベリーなど「岩手でめずらしい種類の果実」を生産し、岩手の食の可能性を広げる活動も行っています。
有機肥料だけを使用して作る、
こだわりのりんごです。
なかでもりんごは有機肥料だけを使用し、100種を超える品種を栽培しています。他の追随を許さない、豊富な種類と品質の良さから多くのパティシエや料理人から支持されています。基本、一般には流通していません。パティスリーや飲食店のみで使われています。吉田聡さんの、海外まで希少果実の種を購入しに行く行動力と、常に新しい考え方を取り入れる体制がサンファームの強みです。
秋田横手のクッキングアップルの郷です。
2011年に秋田県横手市は未曾有の豪雪被害に遭い、多くの果樹生産者が甚大な被害を受けました。「有限会社たかえん」と「パートナー生産者たち」は豪雪被害からの復興を目指すことを決意。調理用りんごの可能性を見出し、「秋田県南部をシェフ、パティシエ、パン職人、和菓子職人から絶大な支持を得られる果物産地にすること」を掲げ、クッキングアップルの栽培をスタートさせました。
コックスオレンジピピンなどの
希少品種の栽培。
当初は紅玉の栽培がメインでしたが、明治時代から果樹栽培を営む「ひららぎ果樹園」4代目の平良木亨さんの助言によって、イギリスのコックスオレンジピピンなど世界各国の希少品種も取り扱うようになりました。ほかにも、果肉の紅いりんごである紅の夢の栽培にも取り組んでいます。それらの希少品種を求め、今では全国のパティシエやブーランジェ、和菓子職人たちがやってきています。今後は横手の果樹園が「挑戦する畑 チャレンジングフィールド」になることを夢見て、果樹の生産・流通による製菓業界のソリューションを目指しています。
お届けするアップルパイをご紹介します。
紅玉のアップルパイはバランスの良い
酸味と甘みが魅力です。
岩手県盛岡のサンファームの吉田さんが作る、紅玉を使用します。紅玉は程よい酸味と濃厚なあじわい、華やかな香りが特徴です。紅玉は大き目にカットし、食感を残しながら砂糖と煮て、パイ生地で包みます。しっかりと果肉が感じられ、食べ応え十分です。
目の覚めるような酸味のブラムリーの
アップルパイです。
ブラムリーはイギリス発祥の青りんごで、クッキングアップルの王様ともいわれています。こちらも吉田さんのりんごです。ブラムリーは非常に酸味が強く、生果では酸っぱさや渋みも感じるくらいなのですが、加熱すると甘い食味と芳醇な香りがあり、ジャムのようにすぐに形が崩れてしまうのが特徴です。そのため、今回はあえて煮ないで生のままスライスし砂糖をまぶして生地で包み、焼き上げました。生のまま焼いた甘味、シャキシャキとした食感が爽やかな新感覚のアップルパイです。
希少品種コックスオレンジピピンの
アップルパイです。
"クッキングアップルの郷"と呼ばれる秋田県横手市のコックスオレンジピピンを使います。イギリス原産のコックスオレンジピピンは、緑と赤の混ざった果皮をもち、りんご本来の強い香りと甘酸っぱさが特徴です。みっちり詰まったような果肉で果汁は少な目です。加熱するととろりとした梨のような濃厚な食味になり、あじわいに奥行きが感じられます。少し果実味も残したコンフィチュールに仕上げて焼き上げました。
アップルパイの魅力に迫ります。
紅玉のアップルパイです。
紅玉の食感を生かすため、大きめにカットします。皮をむき、砂糖で煮ます。りんごが大きく、中まで糖がなかなか浸透しないので、ゆっくり煮ていきます。砂糖の浸透圧で透明感が増してきたら、程よい食感を残して仕上げます。
カットしたパイ生地にりんごを並べます。中に入れるりんごの量はごろっと2.5切れ分、約55gも入っています。
格子状にパイ生地をのせたら、卵液を塗り、200℃に温めたオーブンで約20分焼き上げます。
焼き上がりました!香ばしい香りが工房に広がります。カットすると中にぎっしりりんごが詰まっています。冷凍でお届けします。常温で30分〜1時間解凍後、200〜250度のトースターで1〜2分リベイクしてください。焦げやすいのでアルミホイルでカバーをするのがおすすめです。パイのサクサクとした食感と風味が増します。
3種のアップルパイを作ってくださるのは、
スイーツプランナーの
関谷真紗美さんです。
関谷真紗美さんは食材の隠れた魅力を発掘した商品開発を得意とするパティシエです。
関谷さんは豊洲市場ドットコムのオリジナルブランド「豊洲パーラー」の商品を、独自のセンスと経験で、これまでにいくつも生み出しています。
今回、アップルパイで使用したりんごは、関谷さん自らが足を運び目利きしました。今後も豊洲パーラーは旬の素材を活かした、こだわりのスイーツを展開していきます。
文・林麻実
撮影・天方晴子