奈良県のいちご育種家
大村佳伊人さんと
トップベリー
「イチゴって全然もっと味、いけるんとちゃう?」
簡単な疑問が始まりでした。
いちごは甘酸っぱくて美味しくてみんな大好き!
そんな共通イメージの上に余白を見つけて、
見事に凄い品種を作ってしまった、それが育種家 大村佳伊人さんです。
大村さんの品種はどれも目を見開く甘さ、香料かと思うほどの濃厚な香りです。
今までのいちごの枠を超える鮮烈な味わいをもつものばかりです。
異色の“個人いちご育種家”
現在、いちごの育種開発はそのほとんどが県や国単位で行われます。
しかし、大村さんは個人育種家として「コットンベリー」「古都姫(ことひめ)」「古雪(こゆき)」を育種しました。
費やした時間はたったの二年。驚きです。
「育種はセンス」だそうです。
どの親を掛け合わせるか、どの株を残すか、という選抜のセンスです。
しかし、そのセンスを導くのは膨大な知識と経験だと感じさせます。
実は、超がつく“いちごマニア”の大村さんの頭の中には、
国内外の品種データ、実際に食べた記憶が刻み込まれています。
精度高く凄い品種を生み出せるのは、そんな大村さんだからかもしれません。
「常に理想のいちごから逆算する。研究機関のように予算があるわけでないから、何十万通りも掛け合わせていられないし」とご本人も話します。
販売から生産までを見てきたからこそ感じた、可能性。
大村さんは育種を始める前、八百屋の経営や種苗会社の営業職をされていました。
販売から生産現場をみてきたからこそ、いちごには可能性を感じた、といいます。
一般に求められる収量性や作業性という、経済効率は最低限の範囲にして
自分が純粋に食べたいと思える美味しい品種を個人であれば作ることができる、と考えました。
とにかく“美味しさ”を追求した品種。
大村さんは白イチゴに強い思い入れがあります。
できあがった「コットンベリー」はキャンディーのような香りと濃い甘さです。
テーマは赤いいちごも超える衝撃の味わい
白いちごは赤のいちごに劣る、という常識を変えたかったといいます。
そして、流通一年目の2021年
コットンベリーを口にしたフルーツマニアや業界のバイヤー、パティシエを次々と驚かせました。
奈良県の凄腕4名で組んだトップベリー。
現在、大村さんの育種した品種を栽培できるのは全国で4名だけです。
左から阪野さん(生産者)、大村さん(育種者)、中村さん(生産者)、岩井さん(生産者)。
奈良県の凄腕生産者を大村さん自ら口説き、トップベリーを結成した、といいます。
そのメンバー限定で品種の癖や特性を知る大村さんの目の届く範囲で栽培を行うためです。
清潔なハウス環境。健康な樹。
トップベリーのメンバー全員のハウスが清潔です。
健康な樹姿です。美味しいいちごが育つことが直感的にわかります。
栄養生長、生殖生長を繰り返すいちごは時期による味のばらつきが出やすい作物です。
しかし、それを最小限におさえるべく、環境制御を徹底し、必要なタイミングで必要な手をきちんとかけ、常に最高の味わいを追求しています。
湿度や二酸化炭素濃度など環境制御を徹底しています。
紫外線照射UVBや天敵を利用した病害虫の防除など栽培条件を揃えています。
自信をもってお薦めします。
「品種にまさる技術なし。」
「いちごの味は作り手次第。」
この二つは矛盾しますが、どちらも生産現場では非常によく聞く言葉です。
では、凄い品種を凄い人たちがつくったら?
隙がなく、突き抜ける美味しさ。これがトップベリーのいちごです。
食文化:鈴木 愛理