見た目が美しく、かっこ良いだけでなく、酒呑みに愛用されることを目的に制作された実用の酒杯
毎年、干支にちなんだ新作を作る12年プロジェクトが始動!
私の妻が宮司を務める北谷稲荷神社の御末社に強力な弁財天があります。
その名は宇多川出世弁財天
昭和初期まで道玄坂(宇多川と渋谷川の合流地点)に巨大な一本松があり、
その松を邪魔扱いしたり、悪口を言ったものには、次から次へと呪いがかかり、
謎の病に罹患し、不審死を遂げるものもいたことから、
人々は人喰い松と呼び、たいそう恐れていました。
どんな供養をしても、松の呪いは収まらないので、
人喰い松と呼んでいるのが良くないと考え、
『道玄坂出世大黒松』と呼ぶように変えました。
それで、漸く松の呪いがとけたと伝えられています。
松を道玄坂の道路拡張に伴い、移植することになった際、
工事関係者や松を邪険にしたものが、次から次へと病に取り憑かれ、
松の根元を掘った際、眠っていた白蛇が見つかったので、
お祀りするために、弁財天と龍神の祠が作られました。
太平洋戦争の空襲で、宇多川出世弁財天と龍神の祠は北谷稲荷神社へ移設されました。
それが現在のこの姿です。
実際、私がこの場所で撮影した画像に龍が写ったこともあります。
小さな弁財天ですが、凄いパワースポットと知られ、たくさんのお礼参りの
お賽銭が小さい賽銭箱に入ることが多々あります。
今回の干支の酒杯の着想はこの弁財天と龍神です。
(株)食文化の躍進はこの宇多川出世弁財天の御利益なのも間違いないです。
当社のお得意様は何人もお参りにこられています。
もちろん、北谷稲荷神社の御利益は凄いものがあります。
日々、八百万の神様に感謝の気持ちを持っています。
(株)食文化 代表 萩原章史
『春を告げる』デザインコンセプト
蛇はその特殊な生態で人の心を引きつけ古代から神の使いとされてきました。
信仰の中に、神話の語りの中に、独自の存在を放っています。
とりわけめったに見ることのない白蛇は、
出会えれば幸運、稲は豊作、金運上昇、商売繁盛とされる縁起の神。
弁財天の使いともいわれます。
新たな年を飾るふさわしい絵作りの背景が、この白蛇が枝を伝わる満開の梅の木。
梅は生命力の強さから病気を退ける花、長寿を願う縁起の良い花の一つです。
枝にはその願いの言葉が結ばれています。
華やかな香り立ちこめる梅林の中には、
運を呼び寄せるかのように密やかに花に染まりながら白蛇が佇んでいます。
大倉の白磁は鮮やかで抑揚のあるピンクを醸し出し
新たな年を迎えて杯を傾ける方々にも
淡い高揚感を持っていただければという願いを込めております。
大倉陶園デザイナー 濱島俊司
大倉陶園の創業者の大倉和親は、実用食器の主眼を四つあげています。
一、美観であること(装飾物ではない)
二、清浄なこと(汚れっぽくてはいけない)
三、使い途にあっていること(日常生活に役立てば、必ず喜ばれる)
四、堅固なこと(強くなければいけない)
この基本に照らし合わせると、私の主眼はこうなります。
一、美しくなければいけない。それも実際に使える酒杯として。
二、地はもちろん白磁、様々な飲み物を楽しめる清廉な白が良い。
三、酔っぱらいに付き合っても飽きられない、そして酔わせてくれる酒杯。
四、倒れ難い。仮に倒れたり、テーブル上で落としたくらいでは割れにくい酒杯。
自他ともに認める酒飲みの私としては、日常的に使える酒杯が欲しいのであって、儀礼的な用途の酒杯は要らないのです。
先ず、酔っぱらいは手元が危うくなります。だから、酒杯の安定感は重要です。
酒杯をテーブルに置いている時の安定感
酒杯を持っている指や手のひらとの相性というか、しっくり感
この2つの安定感と美しさを両立し、さらに、酒呑みにとって器に入る酒量にこだわります。酒杯であるから、すぐに飲み干し、何度も注がないとならない小容量の酒杯は、酒呑みの性で使いたくないです。
結局、今回の酒杯は70ccです。こぼれない感じで注いで三杯飲むと約一合です。七〜八杯で『こなから※四分の一升』です。
毎日の晩酌であれば、十杯はちょっと飲み過ぎ!そんな酒杯です。
設計して石膏で型を作り、手に持った感覚などを微調整していく地道な作業
本当の酒呑みのための理想の酒杯を求めて、試行錯誤を繰り返す
すべてが職人の
手作りです
大倉陶園は1919年、大倉孫兵衛、和親親子により創業されました。
「良きが上にも良き物をつくりて」という創業の理念は、現在に至るまで受け継がれ、私共の社是となっております。
今回ご紹介いたします酒杯も創業者の世界最高級の磁器を追及するという理念のもと制作させて頂きました。この酒杯を制作するにあたり、食文化様における理念や姿勢は私共と共通すると認識させていただいており、この作品を皆様にご紹介出来る機会を得ました事を心より感謝申し上げます。
株式会社 大倉陶園
流し込み成形
排泥後、すぐに回転させてムラを防ぐ。その後、一定時間乾燥させる。
カツラ(余分な部分)を切り落とす
縁を整え、厚さを確認
流乾燥後の成形の仕上げ。バリを取り、縁を薄く綺麗に仕上げる。
全体を滑らかに整える。
再度、縁の厚さを確認
底を滑らかに整える。