門外不出の美味
津山伝統 牛の干し肉
津山でのみ手に入る知る人ぞ知る食材
岡山県津山の「牛の干し肉」は、生の肉に塩を擦り込み乾燥させた伝統的な保存食です。津山では明治以前より干し肉をつくり続け、今でも市内のスーパーや精肉店で並ぶ、人口10万人の津山市民にとっては欠かせない食材です。干し肉は、いわゆるビーフジャーキーよりも、しっとりとして柔らかく、生の肉を食べるような独特の味わいは、津山を訪れる多くの人をも虜にしました。
市民には身近な食材かつ人々を魅了する味わいながら、実は数年前まで、その流通は市内でのみ許されるという、門外不出の美味でした。
津山は肉食が許された全国でも限られた地域
日本では、天武4年(675年)に肉食禁止令(牛馬犬猿鳥ハ食スナカレ)が発布され、明治4年までのおよそ1200年にわたり牛馬の肉を食べることが禁止されていました(※)。しかし、津山は、「養生喰い(薬として肉を食べる)」が認められた全国でも珍しい地域です。山陰と山陽を結ぶ交通の要所であった津山は、705年には農耕や輸送に用いるための「牛の市」が開かれています。その発展が牛の養生喰いに繋がり、長い食肉の歴史の中で、保存食の「干し肉」も生まれたと考えられています。
※禁止の理由は、牛馬が農耕に大きな役割を担っていたから、また仏教の教え、など諸説あります。
津山市外への流通は限られた生産者にのみ許されています
「牛の干し肉」は、生の牛肉に塩を揉み込んで乾燥させてつくる非常に原始的な製法でつくられます。また保存食とはいえ、古くからある食品のため賞味期限もビーフジャーキーなどと比較すると短いです。そのため、食べ方や保存方法など、購入した方にしっかりと説明ができる生産者と販売者にのみ、市外へ流通させることが許されています。今回の干し肉も、津山からの産地直送でのみの取り扱いです。
軽く炙って食べてください
今回ご案内する干し肉は、国産牛の生のモモ肉に重量の約10%の塩を揉み込み3日ほどかけて乾燥させています。旨味が凝縮し、乾燥とともに肉の熟成がすすんだ干し肉は、軽く炙ると、じわっと脂が染み出てきます。
塩味がほどよく効いているため、まずは炙って、何もつけずに割いて食べるのも良し、薬味を添えても美味しく食べられます。細かく刻んで、炒飯やスープの具材にするのも旨みが広がるのでお勧めです。