樹齢100年を超える1本の木から広まった
石川県かほく市高松地区・
高松紋平(もんべえ)柿
2023年の初セリでは1箱10万円もの価格がついた、石川県かほく市高松地区を中心に育てられるこの地域の在来種・紋平柿。
この柿はある1軒の農家の見事な実が広がっていったといわれています。果実は240〜280gと大粒。上部から見ると整った丸型で、頭頂部がゴツゴツとし力強い迫力ある形をしています。カニの甲羅のような見事な佇まいです。
紋平柿は
かほく市高松の在来種です
石川県かほく市高松地区は、石川県の中央部、加賀と能登の境界に位置する静かな町です。日本海側に面した砂丘地帯で、かつては金沢と能登を結ぶ能登街道の宿場町として栄えました。
柿は雪の多く冬の農業ができない石川において重要な保存食であり、甘いものが少なかった時代の貴重な甘味でした。各家庭には必ずと言って良いほど柿の木が植えられ、大事に育てられていました。
ある農家の樹齢100年の
見事な柿が広まった
高松紋平柿は、この地域のある農家の庭に生えていた樹齢100年を超える1本の木が起源になります。この農家の柿を当時の加賀藩主、前田家に献上したところ、その美味しさに大変喜ばれ、その家の屋号にちなみ「紋平柿」と呼ばれるようになったそうです。
この1本の木の評判が時代を経て広がっていき、ついには高松地域のブランド柿となっていきました。
10月末頃に収獲、
1か月程度しか流通しません。
紋平柿の生産者であり、生産組合副部会長の藤倉さんの畑を取材させてもらいました。この日はちょうど初セリの日で、収穫作業に忙しそうでした。
藤倉さんは父親の代から40年以上、紋平柿を育てています。
「紋平柿の魅力は高い糖度とこの形」と藤岡さん。「お使い物にしても喜ばれます」
綺麗な紅色で糖度の高い柿を作るには葉の残し方が重要です。実に葉がかからないように、かつ光合成をたっぷり行えるように葉と実のバランスがちょうどよくなるよう、1本1本の木を細かくチェックします。
初セリ1箱10万円!
高松紋平柿プレミアム
高松紋平柿の中でも、重さ300g以上、糖度16度以上で外観の美しいものを「高松紋平柿プレミアム」と呼びます。立派な木箱に入ったこの柿は年間数十箱程度しか流通しません。初セリ価格はなんと10万円です。
この手に乗った柿は惜しくもプレミアムにならなかったもの。
惜しくもプレミアムにならなかった紋平柿をいただいてしまいました。1つは帰ってすぐに食べ、サクサクの食感を楽しみました。それから7日ほど経つと柔らかくモッチリしていきます。食感の違いもお楽しみください。
日本で古くから楽しまれてきた柿は、その地域だけでしか流通されていないものが多くあります。そんな地域自慢の柿を発掘しご紹介していくのは、なかなか楽しいものです。
文・井上真一(写真左)