栄養満点の日本の夏野菜
枝豆特集
夏に旬を迎える枝豆は、栄養豊富で暑さに疲れた体にもおすすめの食材です。 一般小売店でも普通に見かける枝豆ですが、全国各地で栽培されており、地域独自の品種などもある、同じように見えてちょっと違った楽しみ方がある作物でもあります。
そんな枝豆の品種や、豊洲市場ドットコムの目利きがおすすめするおいしい枝豆、おすすめの茹で方などをご紹介します。
1. 枝豆には実は4種あります
一口に枝豆といっても大きく4種に分けられます。枝豆とは大豆の未熟果を食べているので、大豆の皮の色によって大まかに「青豆(白毛種)」「茶豆」「黒豆」と分類されます。 それぞれ味わい・香り・食感の特徴が違い、近年は「茶豆風枝豆」という青豆と茶豆の良いとこ取りのような品種も生まれています。
2. 目利きイチオシの品種
農林水産省によると、枝豆の品種は400以上あるといいます。 特に山形県のだだちゃ豆などは代々受け継いできた品種もあるため、一口に枝豆といっても無数の美味しさが存在します。そこで、多くの品種の中から当店の目利き3名のイチオシ品種をご紹介します。
目利き八尾のおすすめ
私のおすすめは『陽恵(ようけい)』です。白毛種(青豆)らしい充実した実入りとしっかりとした食感が魅力。さらに香りが非常によく“かおり枝豆”とも呼ばれています。後を引く旨味にも富んだ枝豆です。
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目利き赤羽のおすすめ
私がおすすめするのは『新潟の茶豆』です。品種は40種類くらいをリレーしています。 独特の香りと旨みが自慢の茶豆の中でも、新潟県では豆の実入りよりも食味重視のため小ぶりな8割ほどの実入りで収穫するのが特徴です。香りが良く甘みを感じることができます。
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目利き梶のおすすめ
私は群馬県のブランド天狗枝豆の『味緑(みりょく)』がおすすめです。 茶豆風枝豆と呼ばれる品種を使い、食感の良さと香りの良さを兼ね備えた一度食べだすと止まらない美味しさです。 さらに厳選された最高峰『味匠(あじたくみ)』は入荷量が少ないので見かけたらぜひ押さえてください。
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3. 枝豆の豊富な栄養
大豆の未熟果である枝豆には、豆類らしくたんぱく質が豊富ながら青野菜のように食物繊維も多く含み、ビタミンやカリウム、鉄分も含有します。 さらに摂取しにくい微量栄養素である葉酸の含有量は数ある野菜の中でトップクラス。 塩茹でや仕上げに塩を振ることで、汗をかいたあとの塩分補給にも一役買う、夏にうってつけの野菜です。
4. 良い枝豆の見分け方
枝豆は大豆の未熟果ですので、成熟するにつれて豆の風味が強くなります。すると枝豆の特有の香りや旨味が落ちてしまい、淡泊な味わいとなります。 枝豆を楽しむには鮮度が大変重要です。畑の枝豆は写真のように無数の産毛でおおわれています。店頭に並ぶ枝豆も、産毛がしっかりと立っているものは収穫されてから間もない証拠です。フレッシュで食感・味わい抜群の枝豆が楽しめます。 鮮度が重要な枝豆ですので購入後そのまま冷蔵庫に置いておくよりも、一度全部茹でて粗熱を取って密閉容器や袋に入れて、冷蔵庫で保存するのがおすすめです。 大体2〜3日はおいしく食べることができます。また、ゆでて冷凍をすれば1か月は保存が効きます。
5. 枝豆の茹で方
枝豆の茹で方は“たっぷりのお湯”か“少なめお湯か”など、地域や家庭により千差万別です。そのため目利きおすすめの茹で方と、新潟のある農家がおすすめしてくれた茹で方の2種類をご紹介します。
サヤを切る方法では火の通りが良くなることや、アクが良く抜けること、塩味がしっかり入ることが魅力です。 水から茹でる方法は仕上がりのムラが少なく手間が少ないのが魅力です。たくさん枝豆を消費する新潟の農家ならではの知恵です。 どちらの方法でも「塩もみ」「風で粗熱を取る」は共通して重要な工程です。
6. 枝豆と日本人
枝豆の元となる大豆は一説によると、縄文〜弥生時代から日本で栽培されている、非常に歴史の長い作物です。大豆は畑の肉とも称され豊富なたんぱく源・保存食として古くから利用されてきました。 また加工にも向いており豆腐・湯葉・納豆・味噌・醤油など、日本の食文化の根底を支える用途の広さも魅力です。そんな大豆を未熟なうちに枝豆で食す料理法は平安時代には生まれたとされています。 しかし未熟果で食べるのは大変贅沢なことで、一般に広まったのは江戸時代といわれています。 江戸の町には様々な露店や物売りが行き交い、その中に枝豆売りもいました。特に江戸ではサヤが枝についたまま販売されていたことから“枝豆”と呼ばれ、現代のファーストフードのように身近な食として人気だったようです。 このような未熟な豆を食べる文化は日本・中国を中心にアジア圏独特の文化だといわれています。しかし、中国でも産地は一部の地域であり、国内の各地で枝豆を作っているのは日本独自です。
国内の作付面積では新潟・山形がトップを争いますが、出荷量では千葉・北海道・群馬などが多いです。これは新潟・山形では出荷せずに自家需要で食べてしまうためだといわれています。それだけ生活に密接な食材だと言えます。
現在世界一の大豆生産国はアメリカですが、そもそもは江戸末期の黒船来航時にペリー一行が日本の大豆を持ち帰ったことが始まりでした。現在もアメリカには枝豆で食す文化はないですが、近年は “EDAMAME”として、日本発のヘルシーフードとして注目を集めています。
日本が誇る枝豆文化。新鮮な枝豆を楽しめるのは沖縄を皮切りに4〜10月の約半年間です。ぜひ厳選したおいしい枝豆を召し上がってください。
文:八尾 昌輝
写真:八木澤芳彦
参考文献:
喜多川守貞『守貞謾稿』(国立国会図書館デジタルコレクション)
鈴木周作抄訳『ペルリ提督日本遠征記』(国立国会図書館デジタルコレクション)
下境敏弘『[World]生産と消費量で見る世界の大豆事情』(農林水産省HP)