豊洲市場の大卸・中央魚類にて10年以上も練り物を担当しているセリ人がいる。
取引している練り物の荷主は30社以上。日本中からありとあらゆる練り物を集荷し、日々販売している。
その彼が「家族に誇らしげに自慢して食べさせている」のがこの長谷井商店のさつま揚げだ。
食卓に並ぶ日は、普段はそれほど練り物を好まない子供達も大喜びするという。
揚げ物に最も適した原料を使用した贅沢なさつま揚げ
「時代にそぐわない非常に非効率なやり方ではあるが、人が食すものですから、人が 心を込めてつくりあげます」
をスローガンに長谷井商店は創業以来職人の手作業に拘り製造を 続けている。
主原料のすり身にはSA〜RAの6段階の等級があり、品質の良いものほど適度な弾力と滑らかな口当たりになり、ランクが下がると食感が悪くぼそついたりパサパサしたりする。主原料のすり身は原料ランクで一番上、高級蒲鉾を作る様な メーカーが使うFAランク以上のものを使用。普通のさつま揚げでは、揚げてしまうから原料がそこまで一級ではなくても差しさわりない、という理由で、皮目に近しい部分のBクラス(下から2番目)前後の原料を使用する。
スケソウダラは漁獲された船の中で凍結された一番鮮度の良い原料、 イトヨリダイは身質が一番安定しているインド指定で原料を買い付ける。
効率面を無視した丁寧な製造工程
一般的なメーカーはブレンダーというカッター刃が回転するような機械で細かくすり潰していく。
処理量・作業効率ともに圧倒的にブレンダーの方が優れているのだが、長谷井は球状の専用機械を使い真空状態ですり潰し、更に粘りが強く出るようにステンレス臼という機材を用いる。
効率を優先させる工場には真似できない丁寧な作り方だ。
また、モチモチ食感を作り上げるもう一つの方法がある。それは揚げ方だ。
最初の鍋はじっくり低温で、その後二次鍋では高温でさっと揚げる。
この二つの手間暇かかった工程に、食感の秘密が隠されている。
長谷井商店の社員一番人気 !
シンプルながら拘りの詰まっただるま揚げ
ご覧の通り、我々が一般的に想像するさつま揚げとは形が明らかに異なる。
だるま揚げはそのまま食べたときにより美味しく感じてもらうために分厚い部分と薄い部分を1枚で楽しめるようにしてある。食感が違うものを同時に味わう事で、より印象的で美味しく感じてもらう事が狙い。特に薄い部分は伸びるようなしなやかな舌触りが特徴的で上品に仕上げてある。
先述の通り、長谷井の商品はすべて二度揚げするのだが、だるま揚げに限ってはその工程をどちらもより長くとり、モチモチとした食感を楽しめる様に製造している。
溢れんばかりに入れられている副材料たち
長谷井商店では「このまま機械に通したら詰まってしまう!」と危惧してしまう程素材の切り方が荒く、 玉ねぎはくし切りを、えびちぎりにはむきえびがゴロっとそのまま入っている。野菜は国産のみを使用する。
ねぎ天のねぎは地元岡山県産桃太郎ねぎ、玉ねぎ天の玉ねぎは糖度の高い淡路島産。
それを熟練の職人が手作業で成形し、酸化しにくい菜種油で一つ一つ丁寧に揚げている。
この工程は時間もかかるし温度管理も大変。更には生産量も限られてしまう。
が、冒頭の通り人が食すものですから、人が心を込めてつくりあげます。全ては美味しい!
と感動して頂く為の工程なのだ。
一品料理として召し上がって欲しい
関東圏では「そのまま食べる」というニーズよりも「煮物用の具材としての一品」という用途での扱われ方が一般的だろう。
しかし、豊洲のセリ人も我々も、このさつま揚げは「そのまま食べる」という食べ方をおすすめする。本当は、出来立てアツアツをお届けできたら最高にうまいのだが、さすがにそれは難しいので、以下の調理法をお試し頂きたい。
1、電子レンジでさつま揚げ全体がほんのり温まる程度加熱する
2、オーブンで焦げ目が付く位まで焼く
すり身の持つ力強い味と副素材の豊かな風味を存分に感じて頂ける事だろう。 小さなお子様のおやつ代わりにも。
晩酌のお供にもなり得るさつま揚げだ。
ちなみに。長谷井の社員はだるま揚げをお揚げを使う感覚で様々な料理で使用するという。
そば・うどんのトッピングやひいては鍋物にも使用されるとの事。
シンプルな一品ながら汎用性が高いのも社員人気の高さと言えるだろう。